スポンサードリンク

2012年09月30日

かつて所属していた組織について


4年くらい労働組合で仕事をしていました。
仕事以外で時間を取られるけど、いろいろな研修に行かせてもらったり、経営のことを考えたり、人事とか総務がやっている仕事について考えたりする機会があり、人間的な幅は広がったのでなないかと思っております。感謝です!

辞めるにあたって、一回、自分が所属していた労働組合とはいったい何だったのかというのを「総括」というほどかっこよくはありませんが、考えてみようと思って、手にとったのが、ドラッカーの『非営利組織の経営』です。



労働組合は、政府機関からなる公的セクターでもなく、企業からなる民間セクターでもなく、第三の領域、社会的セクターに属しています。例えば、学校、病院、ボランティア団体も同じです。これらをドラッカーは非営利組織と呼んでいます。
まあ、こういうことから、この『非営利組織の経営』を読みながら考えれば、労働組合とは何か?が分かるのではないかと考えたわけです。

非営利組織というのは、利益を追求しません。従って評価の指標がわかりづらい。何を成したのかの成果もわかりづらいことになっています。この辺りに組合員のみんなは憤りを感じてらっしゃるのではないかと思ってました。いったい、組合は何をやっているのだと。

労働組合の過去を考えると、かつてマルクスが言ったような、労働者は資本家に搾取され虐げられている。労働者の地位向上を図ろうではありませんかという流れで、労働環境、賃金の改善を図って来ました。

しかし、今日の状況を鑑みると、組合と相対する経営者は資本家ではありません。かつては我々と同じ仕事をした仲間であり、その中でも優秀であるために高い地位を得た人たちに過ぎません。私たちは誰と戦っているのかという疑問も生じます。

一方、世の中の状況を考えると、経済は右肩下がりで賃金改善という要求をできる環境にはありません。
これは、よく説明するのですが、かつては日本含め、欧米は先行して発展したがために、世界の富の80%を日米欧で分かち合っていました。だから、賃金も向上していたという話です。しかし、今やインターネットや交通インフラの発達によって世界がつながり、世界中どこででも生産して、それを流通させることができるようになりました。そうなるとどうやっても、労働賃金の安い地域に労働は流れていってしまいます。
すなわち、これまで、世界の富の80%を日米欧で分かち合っていたという図式が、変わって、世界中の国で世界の富を平等に分かち合うような図式になっていくのだと思います。そこに残る格差は、日本の中で優秀な人、そうでない人、あるいは中国の中で優秀な人、そうでない人というもののみです。

この富の平等化の流れにおいては、日本の中での優秀な人の大部分においても賃金は下がる方向に行くのではないかと感じています。
従って、労働組合のなすべきことの解は、今や労働賃金の向上にはないということです。

じゃあ、いったい労働組合は何をすればいいんのか?という話しになるのですが、『非営利組織の経営』の中には、こう書いてあります。非営利組織は、何も得ることのないボランティアが多く働いている組織であり、金銭的な報酬を得ていないからこそ、仕事そのものから多くを得るべきだと・・・

金銭的報酬以外に、仕事そのものから得るべき多くのものとは何かというと・・・

昔からそうだったのだと思いますが、人が仕事をして得られるものっていうのは、何も金銭的報酬だけではありません。お金以外にも、生きがい、自己実現、評価、人間関係、成長、おもしろさ、アイデンティティといったものを受け取っています。トヨタに入れば、報酬もいいですし、ヒューマンネットワークも気づけ、働きがいもありますよ、といった具合です。しかし今はこの金銭的報酬以外のものが非常に受け取りづらくなっています。

それは、テーラーさんが唱えた労働生産性向上、つまり、仕事を分割してマニュアル化すれば生産性は向上しますよというのが原因であります。確かに生産性は驚く程向上したのですけど、仕事が分割されることで、自分が一体何を作っているのかがわかりづらくなって来て、一つのものを最初から最後まで作り上げていた昔よりも、働きがいや、面白さというものがわかりづらくなっているのだと思います。

この分かりづらくなってきた部分を補うために非営利組織というものが現れ、発展したのだと思います。ボランティアに参加している人の多くは、無償で働くけれども報酬以外の何かを受け取っているのです。ここにこそ非営利組織の価値があるのだと思います。

従って、非営利組織である労働組合も、この得にくくなった金銭的報酬の改善要求を求めるのではなく、この金銭的報酬以外の何かに焦点を絞って活動していく必要があると思います。
そして『非営利組織の経営』で特に取り上げているのが、人間の成長です。

ドラッカーは前書きで、企業は顧客のニーズが満たされた時役割を果たす。といい、非営利組織は人を変えたとき役割を果たすと説きます。この非営利組織においては外部の人も含まれるのですが、労働組合に限っていえば、外部とは組合員であり、会社であったりと、非営利組織の中では特異的に閉じた組織だと思います。
その視点に立ってみると、組合組織が役割を果たすとは、組合役員、委員、組合員の誰かが人間的に成長したときに役割を果たしたと言えるのではないでしょうか?

『非営利組織の経営』の最後の方で、能力向上には二つの方法があるといいます。一つは、すでに良くおこなっていることをさらによく行うこと、すなわち改善です。もう一つはそれまでとは違うことを行うこと、すなわちイノベーションです。

そして組合活動について言えば、後者のイノベーションをより味わうことができます。僕自身の経験から言っても、特に執行委員になってからは、会社の経営について、組織改革について、運動方針について、政治について、技術者を活性化するにはどうしたらいいか?などいままで自分とは関係のないことと考えていたことに対して考えなければなりませんでした。
これらのことに対して、分からないながらも、まじめに向き合ってきたことで思考の幅も広がり、多少前の自分よりは成長したのではないかと思います。

おそらく、技術でずっとやってきた前の自分よりは高い視点に立てていると思います。

最終的に言いたいことは、今仕事をしていてなんだかマンネリ化しているなとか、あんまりうまく立ち回れてないなという人は、組合活動に主体的、能動的に参加した方がいいよということです。特に組合活動でなければならないということはありません。社外の別のコミュニティでもおそらく同じような効果が得られるでしょう。しかし、身直にあって、組合費まで払っている場合は活用しない手はないと思います。そこには新しいことに出会うことができるし、学びの機会もあります。

そうやって組合活動に皆が参加することで、組合活動自体も意義のある活動になると思います。

期せずして、また強引に、組合活動に参加することになった人は意外と幸運なんではないかと思っています。その幸運を活かせるように、主体的に参加して、いろんなことを学んで欲しいなと願っております。


にほんブログ村 本ブログ ビジネス書へ にほんブログ村
ランキングサイトに参加しています!!
クリックして頂けるとありがたいです!!

posted by air_water at 10:49 | 京都 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 労働組合 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。