著者:村田裕之
特に最初の方は、最近読んだワークシフトよりも面白かったかも。
前回のブログ「デフレの正体を読んで」で、「遺産相続などで若い世代にお金が回れば消費してくれのではと考えられますが、驚きなのは日本では亡くなる側でなく相続する側の平均年齢が67歳だそうです・・・。」ということに触れたが、それが引っかかってて、昨日購入したのが本書です。
やっぱ、シニア世代をターゲットにしたビジネスだよね!
本書は少子高齢化や人口減少社会という危機をビジネスチャンスにしようということだが、はじめにで現状の課題を次のようにまとめている。
@高度成長期に業績を拡大してきた企業には、いまだに若者やファミリー層をターゲットにしているところも多い。年々売上げ減にさらされているにもかかわらず従来のビジネスモデルから脱却できない企業が製造業を中心にまだ多く存在している。
Aシニアの重要性に気づき、「シニアシフト」に取り組んでいるものの、苦戦している企業も多く見受けられる。シニア市場はマスマーケットではなく、多様なミクロ市場の集合体だ。だから従来の大量生産・大量流通によるマス・マーケティングに慣れきっている多くの企業は、この市場に対してどのように取り組めばよいのかの知識や理解が乏しく、正しいアプローチができていない。
僕も製造業の人間なので分かる気がする。サービス業なんかと違って設備投資が大きい分、なかなか過去の遺産を手放せず切り替えが難しいんだと思う。どちらかというとシニア市場ではなく、海外市場に目が向いているような気がする。
さて、最初はどういうシニアシフトの流れがあるかの紹介であった。
■大人用紙おむつ市場が、赤ちゃん用市場を逆転
・赤ちゃん用紙おむつ市場1400億円(2011年)
・大人用紙おむつ市場1500億円見込み(2012年)
※大人用紙おむつ市場は年率5%と成長しているらしい。
■平日昼間のカラオケ客の6割がシニア
・大半が昼間利用
・弁当持込で食べ物の注文はせず、歌い続けるスタイル
※シニア向けのカラオケには、健康食のカフェ、健康チェックができるラウンジなど備えているみたいだ。
■もはやファミリー向けではなくなったファミリーレストラン
・退職者の節約志向に合わせた価格設定
※退職シニアが一人で入店しても違和感のない雰囲気づくりが重要
■テレビの女子アナはおばあちゃん
・熊本県のインターネットテレビ局の天草テレビの女子アナはなんとおばあちゃん
女子アナ最高齢は108歳(2012年現在)
※今朝のNHKで女子アナもおばあちゃんになるかもとか言ってたが、結構な率でそうなりそうな気がする。
ほかにもいろいろな事実が載ってたがこのくらいで
さて、こんなシニア市場の傾向が次に説明されている。
なるほどと思った特徴を3つ紹介
@シニア資産の特徴は「ストック・リッチ、フロー・プア」ということだ。多くの企業がまだシニア市場を「人数が多い、金持ち、時間もちマーケット」とみなしているみたいだが、実際は違うという。シニア世代の所得フローなどのデータなど示し説明されているが、簡単にいうと、「保有財産は多いが、月々入ってくる所得は現役世代に対して低く、そんなに消費にお金が回るわけではない。」ということだ。統計的な平均をみると保有財産には手を付けず、月々の収入分だけ消費しているようなイメージだそうだ。
そしてストックをフローに変えにくくしているのが、シニアの3大不安(健康不安、経済不安、孤独不安)だそうだ。なんとなく分かる。
やっぱりなかなか難しいんだねと思う。
フロー消費ではなく、ストック部分から切り崩して使うようなストック消費にはどんなものがあるのかというと、代表的なのは、金融商品、家のリフォーム、海外旅行、葬式、墓といったものらしい。
A前述したマス・マーケットではなく、ミクロ市場だということ。単純な年齢でのマーケティングではわからず、シニアの消費はシニア特有の変化で決まる。身体の変化、家族構成の変化、ライフステージの変化などを見極めた商品・サービス提供が重要。
たとえば生活のダウンサイジング、退職して収入が減り、車を燃費のいいハイブリッド車に変えて、月々の出費を抑えるなどの傾向を把握する必要がありそうだ。
Bスマートシニアの増加で、市場の性質が変わった。シニア世代でもスマートフォン、タブレットでネットを利用するようになり、情報武装したスマートシニアが増加しているということだ。たとえば昔は、新聞に高級老人ホームの広告を出すと大勢の人が参加してくれ、ぜひここに入居したいという人が多数出た。その当時の入居一時金は平均5000万円程度。今ではシニア世代がネットで商品をじっくり吟味してくるため、供給過剰になっていたという背景もあり、入居一時金が1200万円を超えると高いといわれるようになっているらしい。
こういう特徴は見逃さないようにしたい。
後のほうは、シニア世代問わず活用されているようなマーケティングの手法をシニア世代向けにアレンジして書いているといった感じだった。
ただ、初めて聞くような手法も多く役立った。
時間消費ビジネスの勘所は「連結連鎖」と「新陳代謝」のところなど、興味深い。
だんだん長くなってきたのでこの辺で
ストック・リッチ、フロー・プアやミクロ市場の集合体であること、スマートシニアの増加など、なかなか難しい点がありそうだが、今後ますます進む高齢化で内需を拡大させるには抑えるべき市場ではありそうだ。
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